日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第97回日本薬理学会年会
セッションID: 97_3-B-SL18
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特別講演
神経発達障害の病因病態解明を目指して:遺伝的・環境的要因によるモデルの活用と新規解析系
*大隅 典子
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抄録

神経発達障害(NDDs)は、神経発生発達初期に生じる神経系の障害によりもたらされる一群の複雑な疾患であり、自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、知的障害、言語障害など複雑に絡み合った症状を示す。先進国においてNDDsの罹患者数は増加の一途を辿るが、根治的な薬剤はいまだ開発されていない。NDDsの病因病態解明を推進するためには、齧歯類等を用いた病態モデルの確立が重要であり、複雑な症状に合わせた多様なモデルが必要となる。遺伝学的解析より、これまでに多数のNDDsの責任・リスク遺伝子が同定されている一方、母体の薬物暴露、母体免疫活性化、父加齢などの環境的要因もNDDs発症の原因として知られる。また、NDDsの症状に合わせた解析系の開発も重要である。本講演では、演者がこれまでに解析してきたこれらの病態モデルを紹介するとともに、ビッグデータを用いて人工知能や機械学習を活用する新たな解析系についても言及したい。この講演を通じて、NDDsの病因病態解明に向けた最新の研究動向と方法論について議論し、遺伝的・環境的要因の複雑な相互作用をより深く理解し、有望な治療戦略の発展に寄与することを期待するものである。

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© 2023 本論文著者
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