抄録
包括医療費制度を採用している病院において,救急受診患者の緊急度と医療費の関係を検討するため,平成23年1月1日から8月31日にA病院救急外来を受診した3,295名に対し,電子カルテ記録を解析した。
救急外来受診後に入院となった患者全体の平均入院医療費は391,501円,中央値は208,933円であった。入院患者の疾患群別件数では,循環器系疾患,損傷等の事故・中毒,消化器系疾患の順で多く,この3疾患群で全入院患者の半数を占めていた。入院医療費に関して来院時の緊急度JTASレベル別に検討したところ,レベル2は入院医療費が325,665円と最も高く,レベル3が164,250円,レベル1は138,420円と最も低かった。疾患群別の平均値を比較すると,新生物の疾患群患者の医療費が528,079円と特に高く,緊急度の高い患者の比率が高かった疾患群において医療費が高い結果とはならなかった。
本研究では,「当該病院に入院後24時間以内に死亡した」ような初診時に緊急度が高いJTASレベル1は医療規則上は包括評価の対象外であるため,入院治療費としての解析から除外となってしまった。今後,出来高払いである外来診療部分の診療費を含めてより詳細に検討する必要がある一方,緊急度の高い患者の医療費が必ずしも高いわけではなく,病院経営,医療経済の観点から費用対効果を考えた上での医療資源投入の重要性が示唆された。