抄録
DNA損傷チェックポイント機構では、ATMとATRの二つのタンパク質キナーゼが中心的な役割を果たしており、これらのキナーゼが様々な基質タンパク質をリン酸化することでチェックポイントが機能する。これらのうち、ATMは主に電離放射線などによって生じたDNA二重鎖切断によって活性化される。この活性化の過程にはMRE11-RAD50-NBS1複合体(MRN複合体)が関与している。一方、ATRは主に紫外線によるDNA損傷や複製フォークの進行阻害によって活性化される。ATRはATRIPと常にへテロダイマーを形成して存在しており、その活性化にはTopBP1が関与している。活性化したATRはChk1などを含む様々な基質をリン酸化する。これまでの研究から、NBS1欠損細胞では紫外線照射後のChk1のリン酸化レベルが低いことが明らかとなっており、ATR経路へのNBS1の関与が示唆されている。今回我々は、紫外線照射後のATR/ATRIPの挙動を免疫染色法によって調べた。その結果、ATR/ATRIPのフォーカス形成にはNBS1のC末端側の領域が必要であることが明らかとなった。