抄録
目的 マウスpre-T ST4とSTH1a細胞は放射線高感受性アポトーシスを示すので、その分子要因を解析すること。
方法 高感受性放射線アポトーシスを特徴づけるシグナル分子(ATM, p53, Bcl-2s./BH3s)とcaspasesを解析し、分子経路を解明した。
成績・考察 ST4とSTH1a 細胞は、1 Gy/4 hで~70%の放射線誘アポト−シスを示した。第1の経路は、DSBsによって活性化されたATM/p53がBH3-only PUMA, Noxa, Bim蛋白発現を促進し、PUMA/BimがBaxを、NoxaがBakを活性化(Mcl-1/Bakから遊離)した結果、cytochrome c (Cytc)を遊離し、caspase-9−caspase-3/7カスケードを活性化する内因経路であった。第2の経路はp53 下流でのPPIDosome (PIDD/RAIDD/caspase-2)を介したcaspase-2 の活性化経路で、Ac-VDVAD-CHOとcaspase-2 siRNAによって第1経路とは別個に阻害された。caspase-8によるtBid生成のDNA損傷アポトーシスへの寄与ついては賛否が分かれている。ST4とSTH1a両細胞では50% アポトーシスを起こす1 Gy/2 h の初期ではcaspase-8は活性化されず、さらにcaspase-8阻害よりもcaspase-2阻害がtBid生成をより強く阻害した。新経路caspase-2—tBid—Cytc遊離機構が解明され、第一の経路とともにST4/STH1aの放射線高感受性アポトーシスの分子的基礎をなした。