日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-6
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放射線応答・シグナル伝達
DNAマイクロアレイを用いた変異p53下流シグナルの放射線応答解析
*泉 七加岡市 協生
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抄録

癌細胞の中において、p53の変異が50%もの高頻度で見つかっている。私達は、15種の変異p53細胞と正常p53細胞を作成した。それぞれの細胞で放射線に対する感受性が異なっていることを既に報告している。そこで今回、各変異p53細胞で放射線感受性が異なるメカニズムを探るため、非照射、3Gy、6Gy放射線を照射した時の各細胞におけるp53関連遺伝子の発現パターンを、DNAマイクロアレイを用いて測定し解析を行った。
[材料,方法]
1).細胞:p53遺伝子を完全に欠失しているヒト骨肉腫Saos-2細胞を用いた。
2).各種p53導入細胞:Saos-2に正常p53遺伝子を導入したWild細胞と、各部位が変異しているp53遺伝子を導入した変異p53細胞をクローニングした。各々、LacSwithシステムを用いた。
3).DNAマイクロアレイ:Affymetrix社のGene Chip(Human Genome U133 Plus 2.0 Array)を使用した。遺伝子発現の解析にはGeneSpringを用いた。
[結果,考察]
変異p53は、正常p53細胞が持っている遺伝子誘導能の大部分が失われていた (Loss of function)。また、正常p53細胞にはない新たな遺伝子誘導機能を獲得していた(Gain of function)。放射線感受性と遺伝子発現誘導との相関を調べて、放射線感受性を決定している遺伝子がないかどうか検索を行った。特に、245S変異細胞のApoptosis Pathway(6Gy照射時)では、Gain of functionとしてTNF関連遺伝子の発現がみられた。この結果からG245S細胞が放射線に耐性であることを示すPathwayを描くことができた。その他の変異p53細胞においても、遺伝子誘導能と放射線感受性の相関性について解析を行った。

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© 2008 日本放射線影響学会
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