抄録
【はじめに】中心体複製周期は厳密にコントロールされており,その調節機構の破綻が中心体過剰複製の原因となる。
【対象と方法】膀胱癌細胞株,線維芽細胞CCD32を高温度に暴露して検討した。
【結果】KK47は,中心体過剰複製を認めない細胞株であった。温熱治療45度20分間の温熱治療でG2停止となった細胞に中心体過剰複製が生じ,細胞分裂の障害,多倍体化,細胞分裂死が生じた。癌細胞はDNA損傷が生じた時に,G2停止時に中心体の再複製の抑制ができない状態となり,中心体過剰複製を利用して分裂死が生じる経路を持つことが明らかとなった。
【結果】KK47, HT1197, HT1376,は温熱療法24時間目以降にG2停止となった細胞に中心体過剰複製が生じ,細胞分裂死が生じた。CCD32においてsiRNA法を用いて検討した結果,p53はG1停止とG2期の中心体再複製の抑制に関与しているが,p21はG2期の中心体再複製の抑制に関与していないことが示唆され
【結語】中心体過剰複製は癌の温熱療法による細胞死に重要な役割を果たすと考えた。