日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: CP-1
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放射線発がん
染色体異数化を介した細胞がん化
*縄田 寿克吉居 華子大津山 彰法村 俊之渡邉 正己
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キーワード: 染色体異数化, p53, がん
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抄録
染色体異数化あるいは数的アンバランスは、がん細胞で最も典型的な遺伝的異常形質である。この現象は、最初に発見された100年以上前から細胞がん化の原因であると考えられてきた。その後、遺伝子が発見されたことによって、染色体異数化の発がん起源説は、発がんは突然変異によって生ずるとする発がんの遺伝子突然変異説に取って代わられた。しかし、我々は、固形がんのほとんどが染色体異数性を示すこと、多くの発がん剤は必ずしも変異作用を持たないこと、そして、がんから抽出した変異遺伝子をヒトや実験動物の正常細胞に移入してもそれらの細胞をがん化できないという事実に注目して、再度“発がんの染色体異数化仮説”の真偽を再調査することとした。
そのため、本研究では、 p53遺伝子が正常およびノックアウトされたC57Blマウス(p53 (+/+)および p53 (-/-))の13日齢胎児カーカスから細胞を採取し用いた。細胞は、T75フラスコあたり106を植え込み5日毎に継代培養した。その結果、いずれの細胞も継代培養を続けるだけで自然に無限増殖能を獲得することが判った。無限増殖能を獲得した細胞のうちp53ノックアウト細胞は、すべて造腫瘍性を獲得したがp53正常細胞は、造腫瘍性を獲得しなかった。無限増殖能を獲得した細胞は、すべてで染色体の数的異常が観察されたが、造腫瘍性を示した細胞の染色体は三倍体化、造腫瘍性を持たない細胞では四倍体化が主流であった。染色体構造異常は、p53ノックアウト細胞で2倍ほど高いものの数的異常の 1%以下の頻度であるとともにモノクローナル起源ではなかった。これらのことは、細胞のがん化には染色体三倍体化は、細胞がん化の結果ではなく原因であることを示唆している。
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© 2008 日本放射線影響学会
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