日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: EP-17
会議情報

放射線治療・修飾
原子力機構TIARAにおける生物照射用マイクロビーム装置の現状
*舟山 知夫坂下 哲哉佐藤 隆博深本 花菜倉島 俊横田 裕一郎横田 渉神谷 富裕小林 泰彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
高LETの重イオンは、γ線などの低LET放射線と比較して大きな生物効果を示す。しかし、重イオンがその飛跡に沿って付与するエネルギーがどのように生体分子に作用し、高い生物効果を引き起こすかについてはまだ明らかになっていないことが多い。この重イオンの生物影響機構を明らかにすることは、重イオンのがん治療応用や、宇宙放射線の人体影響評価をおこなううえで極めて重要である。重イオンは、生物線量域におけるエネルギー付与の離散性が低LET放射線と比べて高いため、従来のブロード照射による解析では、個々の細胞に照射される線量に不均一が生じ、これが正確な生物効果の解析の障害となっていた。そこで、私たちは、原子力機構・高崎量子応用研究所・TIARAのAVFサイクロトロンにコリメーション式重イオンマイクロビームを設置し、これをもちいることで、生物の重イオン照射効果研究を進めてきた。その一方で、コリメーション式マイクロビームでは実現できない照射をおこなうために、新たなビームラインに集束式重イオンマイクロビーム装置を設置し、それをもちいた生物照射技術の開発を進めている。集束式重イオンマイクロビーム装置は、既存のコリメーション式マイクロビーム装置では不可避であったコリメータエッジでの散乱イオンの発生を回避することが出来るため、従来よりも微細なビームで細胞を正確に照射することができる。現在、昨年度までに設置された細胞照射用ステーションをもちいて大気中で顕微鏡観察下の試料への照準照射技術の開発を進めている。また、従来からもちいられてきたコリメーション式マイクロビームでも、コリメーション式マイクロビームの特徴である高フルエンス照射を生かした新たな照射を実現できるようにするための細胞照準照射系の新規設計とシステム更新をおこなうなどの改良を施した。講演では、これらのトピックスに関して概説する。
著者関連情報
© 2008 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top