日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: EP-20
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放射線治療・修飾
重粒子線に対する中皮腫細胞の放射線感受性
*劉 翠華鈴木 雅雄鶴岡 千鶴
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抄録
【目的】悪性中皮腫とは、胸腔又は腹腔の内側を覆う膜に悪性がん細胞が形成される病気であり、アスベスト暴露歴や吸入などが原因とされている。潜伏期間は長く、暴露後から発症までの期間は20〜40年ほどと言われている。近年、全世界で年間1~1.5万人が新規に悪性胸膜中皮腫と診断されてその数は年々増加傾向にあるため、2020年にはピークに達すると推測されている。しかし、これまでに外科的手術や各種抗ガン剤が試されたもののその有効性は低く、生存期間は6〜8ヶ月と非常に短い。我々は、ヒト悪性中皮腫細胞によるX線及び重粒子線の放射線感受性について検討を行った。 【材料と方法】公的な細胞バンクより入手した6種類のヒト中皮腫細胞にX線あるいは炭素線(13keV/µm、80keV/µm)を照射し、照射直後にコロニー法による生存率を指標として放射線の感受性を比較した。 【結果と考察】6種類中皮腫細胞におけるD10値は、X線で3.02Gyから5.74Gy、炭素線(13keV/µm)で2.16Gyから4.08Gy、炭素線(80keV/µm)で0.97Gyから2.16Gyであった。2000年に鈴木らが報告した14種類のヒトガン細胞のD10値が、2.74Gyから8.15Gy(X線)、2.39Gyから7.42Gy(炭素13keV/µm)、1.11Gyから3.86Gy(炭素77keV/µm)であったことから、今回用いた中皮腫細胞の放射線感受性はX線や低LETの炭素線に対しては抵抗性のグループに属したが、高LETの炭素線に対しては感受性のグループに属した。これらの結果D10値で計算したRBEは、炭素線13keV/µmで1.20から1.62であったのに対し80keV/µmでは2.78から3.10となり、中皮腫細胞は他の様々な感受性を持つガン細胞同様に、特に高LET成分の炭素線での生物効果を高める可能性があると示唆された。
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© 2008 日本放射線影響学会
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