日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: W3-2
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重粒子線治療生物学の進展
重粒子治療がもたらす生物学的効果: マウスモデルおよび子宮頸癌臨床生検材料を用いた解析
*岩川 眞由美野尻 和典田巻 倫明大野 達也加藤 真吾今留 香織中渡 美也子今井 高志
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抄録
高い線エネルギー付与が可能な炭素イオン線照射は、癌臨床現場において、めざましい治療成績を挙げている。その高い殺細胞効果については、すでに多くの研究成果が報告されている。一方、臨床現場では、更なる治療成績の改善のためには、局所治療後の遠隔転移に対する検討が急務である。私たちのグループでは、これらを総合し、in vivo実験を基本に、炭素イオン線による腫瘍制御作用と、遠隔転移に及ぼす影響につき、分子生物学的研究を行っている。すなわち、4種のマウス腫瘍NR-S1, SCCVII, NFSa, #8520(放医研 安藤興一先生、小池幸子先生より寄与)を用い、C3Hマウス下肢移植腫瘍を作成し、炭素イオン線照射(290MeV/u, spread-out Bragg peak (SOBP) 60mm)を4 Gy-50Gyの範囲で種々の線量を一回照射した。対照ビームとして、γ線照射 (137Cs, γ線)を8Gy-70Gyを用いた。表現型としての局所効果は、腫瘍体積の測定による腫瘍増殖遅延日数で評価した。転移能は、照射後2週間目の肺転移数で評価した。各照射群における下肢局所腫瘍および肺転移巣のマイクロアレイ解析を施行し、その作用機序を検討した。マイクロアレイ解析で明らかになった、炭素イオン線により誘導された遺伝子群、あるいは、局所炭素イオン線照射後の肺転移巣における発現遺伝子群は、RT-PCR解析結果、免疫染色など病理学的検討を更に加えた。また、情報科学ツールを用いて、仮想パスウェイを作成した。以上に、臨床子宮頸癌サンプルを用いた、その確認実験結果をあわせて、炭素イオン線のもたらす生物学的メカニズムにつき発表する。
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© 2008 日本放射線影響学会
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