日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-56
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放射線治療・修飾
X線および重粒子線照射された中皮腫細胞の放射線感受性と染色体数相関関係の検討
*劉 翠華鈴木 雅雄鶴岡 千鶴野島 久美恵古澤 佳也
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抄録
【目的】悪性中皮腫とは、胸腔又は腹腔の内側を覆う膜に悪性がん細胞が形成される病気である。これは1870年にすでに確認され、1960年までには中皮腫とアスベストの関係が明確であることが指摘された。実際80%の中皮腫患者はアスベスト暴露歴や吸入などが原因とされている。潜伏期間は20~40年と言われており、1949年から1979年までアスベストは広範囲で使われていたため、これから悪性胸膜中皮腫患者さんの人数は年々増加し、2020年にはピークに達すると推測されている。悪性中皮腫の進行速度は速く 予後が大変悪い腫瘍の一種であり、生存期間は6~8ヶ月と非常に短い。我々は、ヒト悪性中皮腫細胞に対するX線及び重粒子線の放射線感受性を調べた。更に中皮腫細胞の放射線感受性と染色体数との相関関係について検討を行った。
【材料と方法】公的な細胞バンクより入手した6種類のヒト悪性中皮腫細胞のM期染色体数を調べた。又はその6種類の中皮腫細胞にX線あるいは炭素線(13keV/µm、80keV/µm)を照射し、照射直後にコロニー法による生存率を調べた。
【結果と考察】炭素線の二つLETのD10 値およびX線のD10 値をplotした結果はX線のD10値と低LETの炭素線のD10値を直線相関するが、高LETの炭素線のD10値とは指数相関になった。X線のD10値に従って高LETの炭素線のD10 値は緩やかに増加し、高LETの炭素線に対しては、他の部位由来のがん細胞株と同様に放射線感受性が高くなったことが判った。各種類中皮腫細胞の染色体平均数は48~95本と幅の広い分布を取った。異なる中皮腫細胞株間の染色体数に違いがあると共に、一つの細胞株においても幅の広い染色体数の分布を取ることが判った。平均の染色体数に対するX線、炭素線のD10値をplotした結果は、一種類の細胞株を除いていずれの細胞のD10 値も染色体数に依存しないことが判った。以上の結果は、鈴木とSchwartz et al らが報告した、DNAの量あるいは染色体の数と放射線感受性が関係ない、とする研究結果と一致している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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