日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-63
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低線量・低線量率
低線量率γ線連続照射マウス脾細胞の染色体異常頻度と集積線量との関係並びに照射終了後の異常頻度の時間的変化
*香田 淳豊川 拓応石崎 瑠美一戸 一晃小木曽 洋一田中 公夫
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キーワード: 低線量率, M-FISH, 染色体異常
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抄録

低線量率放射線長期連続被ばくの染色体への影響を明らかにするため、SPF条件下でC3Hマウスに低線量率[20 mGy/22 h/day(0.91 mGy/h)]137Csγ線を8週齢より最大400日間連続照射し、脾細胞中の染色体異常頻度と集積線量との関係をM-FISH法を用いて調べた。照射マウスでは、転座型異常と二動原体異常頻度は集積線量に依存して、8000 mGyまでほぼ直線的に増加し、またクローンが4000 mGyから出現し、6000 mGy以上で急増した。非照射対照マウスでは、8週齢より約400日後まで、加齢に伴う転座型異常および二動原体異常の増加は、殆んどみられなかった。低線量率放射線連続照射マウスおよび高線量率(890 mGy/min)照射マウスの染色体異常頻度を同一総線量(500 mGy)で比較して、線量・線量率効果係数(DDREF)を求めたところ、染色体異常の型により異なるが2.6から4.1となった。
さらに、低線量率[20 mGy/22 h/day(0.91 mGy/h)]137Csγ線を200日間(4000 mGy)連続照射終了後、非照射SPF条件下で最大200日間飼育し、染色体異常頻度が減少するかどうかを調べたところ照射終了後150日目では、転座型および二動原体異常ともに減少したが、同週齢の非照射対照マウスの異常頻度レベルにまでは低下しなかった。不安定型染色体異常である二動原体異常頻度が低下しない理由は、脾リンパ球の寿命に伴う染色体異常頻度の減少のみでは説明できず、骨髄などからの未分化なリンパ球の脾臓への補給の可能性などほかの説明が必要である。以上の結果は低線量率放射線連続照射の脾リンパ球への影響が、高線量率放射線照射とは大きく異なることを示唆しており、照射後長期間を経ても存在する染色体異常が、低線量率放射線連続照射時に線量依存的にほぼ直線的に増加する要因になっていると考えられる。これらの知見は、低線量率放射線のリスク評価に役立つ。本研究は青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。

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© 2009 日本放射線影響学会
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