日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P3-115
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放射線発がん
Minマウスにおける放射線発がん機構の解析
*岡本 美恵子
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キーワード: Minマウス, 消化管腫瘍, LOH
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抄録
【目的】Minマウスに対する放射線の腫瘍誘発効果は照射時の週齢に大きく依存し、生後1-2週齢照射で認められる強い誘発効果は7週齢では激減する。このメカニズムを明らかにするために、発生した腫瘍におけるApc遺伝子セカンドヒットについて解析した。また、Apc遺伝子以外の関与の可能性について検討した。
【材料と方法】18番染色体のコンソミックMinマウスに対して、2週齢または7週齢でX線を全身照射し、発生した小腸・大腸腫瘍について18番染色体のLOHの有無を統計学的手法により判定した。今年度は、Apc遺伝子のLOHが認められないとされてきた腫瘍についても、18番染色体全域のLOH解析を行った。また、Apc遺伝子のコピー数の推定およびアレイCGHによる解析を試みた。
【結果】Apc遺伝子セカンドヒットとしてのLOHを示す領域は、非照射群では18番染色体の大半あるいは全域にわたるものが多く、介在欠失タイプは稀であること、2週齢照射群では逆に大半がApc遺伝子を中心とした介在欠失型であり、染色体全域にわたるものは少ないこと、7週齢照射群では、非照射群と2週齢照射群の中間のLOHパターンを示すこと、小腸では大腸に比べて染色体全域のLOHを示す腫瘍の割合が高いこと、が明らかになった。PCR-SSCP法によりApc遺伝子のLOH無と判定されてきた腫瘍の一部は、今回の統計学的手法でLOHが認められた。
Apc遺伝子のLOHが認められない腫瘍の一部では、18番染色体の末端近くの狭い領域に特異的なLOHが認められた。この領域のLOHはApc遺伝子のLOHを示す腫瘍にも認められるが、2つのLOH領域間にはLOHのない領域が存在することから、両者は異なった事象として発生したものと考えられる。染色体末端付近のLOHを示す腫瘍は、同時に18番染色体の別の領域にもLOHを示す傾向が認められた。アレイCGHによる予備的な解析では、Apc遺伝子近傍でコピー数の減少が認められる腫瘍においても、これらの領域ではコピー数の変化は認められなかった。
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© 2009 日本放射線影響学会
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