日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P3-134
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放射線被ばく影響・疫学
原子爆弾放射線の継世代影響研究
―コピー数変異体(CNVs)を指標として―
*高橋 規郎佐藤 康成小平 美江子佐々木 圭子児玉 喜明下市 裕子金子 順子三浦 昭子今中 正明檜山 英三福場 郁子片山 博昭コローン ジョン
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抄録
【目的】原子爆弾放射線の継世代影響、即ちヒト生殖細胞への影響をゲノムワイドに研究するために、我々は人工バクテリア染色体 (BAC)-マイクロアレイを基盤とした比較ハイブリダイゼーション(BAC-aCGH)法を導入した。本法を用いて305名を調べたので、その結果を報告する。【実験】我々は、少なくとも片親が高線量放射線(≧ 1.0 Gray)に被曝している265名の子供と非被曝両親から生まれた40名の子供をBAC-aCGH法を用いて調べた。この調査においては、ヒト常染色体上に存在する約2,500 BAC-クローンを貼り付けたアレイを使用した。【結果】総数1,534個のコピー数変異体(CNVs)を同定したが、そのうち97CNVsは、その頻度が1%以下である“まれな”変異型と呼ばれるもので、32領域に見つけられた。まれなCNVsについて、それらが新規突然変異なのか、親から遺伝したものなのかを、子供と両親のDNAを定量ポリメラーゼ連鎖反応法で調べることにより確認した。3名の子供に検出した3個のまれなCNVsは、両親には認められなかったので、それらを“新規突然変異候補”と定義した。1個の突然変異体は欠失型であり、残り2個は増幅型であった。新規突然変異の親の起源は、変異領域に存在する単塩基多型を用いて決定した。3個すべての変異体は被曝した父親由来の配偶子に生じていた。【考察】被曝グループの突然変異率が被曝していないグループの突然変異率に比べ有意に高いか否かに関して確実な結論を得るには、新規突然変異の数(3個)はあまりにも少なすぎる。また、過去のデータでは放射線が原因の突然変異は欠失型であると思われていた。しかし、過去の動物実験においては、その技術的限界により重複型は検出できない。断片重複型が欠失型と同様に一般的に生ずるか否かを調べることは重要である。そのため、我々は高密度アレイシステムを用いて、1) より多くの遺伝子座数を調べ、その結果として同定される新規突然変異数を増やすこと、2) 重複型新規突然変異が放射線量に依存しているか否かの情報を得るための調査を継続している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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