抄録
放射線影響研究所(放影研)は、60年にわたって放射線の影響を研究してこられました。これらの研究の成果は、医学的治療のためや、基準を定めるために世界中で活用されています。長期的には、これらの研究は人間の健康維持のために欠かせないものとなるでしょう。短期的には、核兵器をなくす必要があります。
放影研の研究は、核兵器が残虐かつ非人道的で、その影響が時間的にも空間的にも戦場に限定されないことを明らかにしています。これでわかるように、核兵器は非合法な兵器なのです。マンハッタン計画に携わった科学者の過半数は、原子爆弾は決して使用されるべきではなかったと考えています。核兵器は禁止され、廃絶されるべきだったのであり、少なくとも国際管理のもとに置かれるべきでした。今日、地球上の大多数の市民も国も、核の脅威から解放されることを願っている一方で、いまだに、貪欲で、競争好きかつ権力志向の一握りの人々が、地上のすべての生命体を絶滅の脅威にさらしていることを大目に見ています。
来年5月、人類は、核兵器を廃絶するか、あるいは全ての国が保有することになるかを決めることになります。もし後者を選択すれば、私たちは地球上に無数にある問題を、人類を急激かつ暴力的に削減することで解決する道を選ぶことになります。私たちは、数十年、数世紀、あるいは、恐らく、永遠に、平和の文化へと昇華する希望を絶ってしまうことになるのです。国際社会が次の核不拡散条約(NPT)再検討会議(2010年5月、ニューヨーク)で、完全軍縮に向けた確実な一歩を踏み出すことに失敗すれば、2015年にあるその次の再検討会議までに核兵器国の数は、2倍、ないしは3倍にならないとも限りません。
これを未然に防ぐためになすべきことは、ヒロシマ・ナガサキ議定書にまとめられています。私たちは即座に交渉を開始し、期限を設定しなければなりません。一刻も無駄にはできないのです。軍縮は、文字通り、生死のかかった課題なのです。