日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-8
会議情報

放射線治療2
重粒子線照射によるヌードマウス移植腫瘍における癌幹細胞関連タンパクの発現変化
*崔 星
著者情報
キーワード: 重粒子線, 癌幹細胞, 放射線
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
ここ十数年、癌幹細胞概念が提唱され、大腸癌、肝癌、メラノーマなど多くの腫瘍についてその存在が確認され、再発や転移、化学療法や放射線抵抗性と強く関与することが報告されている。高LET重粒子線はX線や抗癌剤抵抗性の腺癌系に非常に有効とされる。しかし、重粒子線照射による癌幹細胞への影響についてはまったく解明なされていない。今回、ヒト大腸癌由来HCT116細胞のヌードマウス移植腫瘍に対し、炭素線照射(290MeV/u、 50keV/um、SOBP中心)とX線照射による癌幹細胞関連タンパクの発現への影響及び腫瘍増殖遅延、治癒との関連について検討した。X線15、30 Gy照射ではそれぞれ5、28日間の腫瘍増殖遅延が認められ、60 Gyでは腫瘍の治癒が認められた。一方、炭素線5、15 Gy照射ではそれぞれ12、82日間の腫瘍増殖遅延、30 Gy照射では腫瘍の治癒が認められた。腫瘍増殖遅延曲線からX線に対する炭素線のRBEは3.82と算出された。照射1ヶ月後の病理所見では、炭素線照射の移植腫瘍はX線照射のものに比べがん細胞の腺管様構造が完全に破壊され、繊維化、空洞化が顕著であり、血管新生もより乏しくなっていることが認められた。免疫組織化学染色所見では、癌幹細胞関連マーカーCD133、EpCAM、血管新生関連因子VEGF、HIF-1aやなどのタンパク発現はX線照射により増強されるが炭素線照射により有意に抑制された。以上より、炭素線はX線照射に比べ血管新生抑制効果が強く、癌幹細胞をターゲットとしてより有効に癌細胞を死滅させることによって、腫瘍制御率が高いことが示唆された。
著者関連情報
© 2009 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top