日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-10
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放射線治療3
治療用高エネルギー重粒子線ブラッグピーク付近における水分解
.OHラジカル収量~
*山下 真一前山 拓哉フントウィッツ デイビッド翠川 匡道岡 壽崇バルダッキーノ ジェハー田口 光正木村 敦工藤 久明勝村 庸介村上 健
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抄録
放射線の間接効果の詳細を理解していく上で水分解生成物の収量はトラック構造の解明などにおいて重要な意味を有する。これまで治療用重粒子線を用いた水の放射線分解生成物のうち主要な水和電子、ヒドロキシルラジカル(.OH)、過酸化水素の収量測定を行ってきた。Coumarin-3-carboxylic acid (CCA)を.OHの捕捉剤として用い、反応後生成される安定なケイ光物質7OH-CCAを定量することで.OH収量を高感度に測定できる手法の開発も行ってきた。本研究では実際の治療でガン患部に重ね合わされるブラッグピーク付近で.OH収量がどのようになっているか実験的に明らかにすることを目指した。
照射には放医研HIMACからのC290および135、He150、Ar500MeV/uを用い、試料溶液にブラッグピーク付近が重なるようポリマー製エネルギー吸収材の厚さを制御して上流に挿入し、照射後HPLCケイ光測定によりケイ光体生成量を定量し、.OH収量を決定した。なお試料溶液には26および1.5mMのCCA水溶液をリン酸緩衝液でpH6.8に調製したものを用いた。
どの重粒子線でもブラッグピーク付近で.OH収量が極小値をとること、ブラッグピーク直後で収量が数倍に跳ね上がることなどが明らかとなった。高エネルギー重粒子線のブラッグピーク付近では核破砕により生成した加速イオンよりも軽い粒子の寄与が大きくなることが知られているため、今回得られた測定結果をHIBRACやPHITSといった核破砕シミュレーションと合わせて現在検討を進め、.OH収量に対する核破砕粒子の寄与を明らかにしているところである。
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© 2009 日本放射線影響学会
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