抄録
目的 放射線耐性細胞の出現や存在は、放射線療法の予後を左右する解決すべき課題である。より有効な放射線療法を開発するために、標準的な放射線療法である2Gy/日のX線を30日以上照射し続けても増殖する臨床的放射線耐性(clinically relevant radioresistant; CRR)細胞を樹立した。放射線耐性の要因を明らかにするために、放射線耐性と交叉耐性を示す抗がん剤のスクリーニングを行ったところ、CRR細胞は微小管脱重合阻害剤であるドセタキセル(docetaxel; DOC)に耐性を示すことが分かった。DOC耐性の要因として、MDR1などの薬剤排出ポンプやベータチューブリンの過剰発現が知られているが、解析の結果どちらの関与も否定された。本研究では、なぜCRR細胞がDOCに耐性なのかを活性酸素種(ROS)関与の視点から明らかにしようとした。
方法 ヒト肝がん細胞株HepG2とヒト口腔がん細胞株SAS及びそのCRR細胞であるHepG2-8960-RとSAS-Rを解析に用いた。細胞のH2O2への感受性はMTT assayで評価した。また、細胞内のROSの量は、蛍光色素で解析した。
結果 DOC処理により、細胞内にROSが発生することから、DOC耐性の要因の一つとして、ROSへの耐性が知られている。そこで、放射線耐性細胞はH2O2に耐性であるのかを解析した。はじめに、DOC処理により細胞内にROSが発生するのかを蛍光色素で検出すると、ROSの発生が認められた。次に、CRR細胞のH2O2への感受性を解析したところ、明らかに親株に比べてH2O2へ耐性を示した。
考察 CRR細胞がDOCに交叉耐性を示すのは、DOC処理により発生するROSに耐性であるからだということが示唆された。