日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OE-2-1
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E: 放射線治療・修飾
悪性脳腫瘍細胞の放射線感受性に対するCOX-2阻害剤celecoxibの効果
*鈴木 健之GERELCHULUUN Ariungerel洪 正善孫 略石川 隆昭楽 飈盛武 敬坪井 康次
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抄録
[目的] COX-2はがんの転移浸潤、血管新生、放射線耐性に深くかかわる因子であり、潜在的にCOX-2が過剰発現している細胞は放射線感受性が低く悪性度が高い。特に悪性脳腫瘍ではCOX-2の発現が高く、治療抵抗性との関連が示唆されている。また、悪性脳腫瘍の多くは低酸素状態にあり放射線感受性が低く血管新生が盛んである。そこで本研究では、低酸素状態で培養した脳腫瘍細胞の放射線感受性に対する選択的COX-2阻害薬celecoxibの効果を検討した。 [材料方法] 対象としてヒト膠芽腫細胞株A172、マウス悪性脳腫瘍細胞株GL261を用いた。通常に培養後、ガスパックパウチを用いてこれらの細胞を低酸素環境(Hypoxia)に維持した。選択的COX-2阻害としてはcelecoxib (Phizer.US)を使用した。ガンマ線照射には137Csガンマセルを使用した。celecoxibの濃度を変化させて添加して5Gyのγ線照射を行ない、抗腫瘍効果の検討を行った。抗腫瘍効果は、増殖抑制試験、コロニー形成法で評価し、COX-2並びにERストレス関連タンパクの発現はウェスタンブロットで評価した。 [結果] 低濃度(10μM以下) のcelecoxib単独ではCOX-2の発現抑制が確認できたが、有意な増殖抑制効果は認められなかった。一方、高濃度(30μM)のCelecoxibは単剤でERストレスを誘導することが確認された。また、増殖抑制試験においては、γ線照射単独と比べ、γ線+celecoxibでは有意な細胞増殖遅延がみられ、celecoxibの放射線増感作用が示唆された。さらに、低酸素下(Hypoxia)においてもNormoxiaと同等かそれ以上の増殖抑制効果が認められた。celecoxib存在下でのγ線照射は、細胞の酸素状態に依らず悪性脳腫瘍細胞株に対しても高い増殖抑制効果を示した。 [結論と考察] Celecoxibは単剤でERストレスを引き起こし、アポトーシスを誘導することが知られている。一方、放射線照射もERストレスを引き起こす。Celecoxibは通常酸素下のみならず低酸素下培養の脳腫瘍細胞に対しても放射線増感作用を示した。この効果はERストレスの誘導にあるものと推定される。今回の結果から、低酸素状態にある膠芽腫細胞に対しても放射線増感作用を示したことで、celecoxibは放射線抵抗性の膠芽腫に対する放射線治療においても増感効果を見込める薬剤であることが示唆される。
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© 2011 日本放射線影響学会
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