日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OE-2-3
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E: 放射線治療・修飾
微小平板ビーム放射線療法におけるX線エネルギー依存性の検討
*篠原 邦夫藤田 創鷲尾 方一近藤 威成山 展照
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抄録
放射光の医学利用の一つとして注目されている方法に微小平板ビーム放射線療法がある。この方法は、ビーム幅数十μmの平板ビームをビーム間隔数百μmで並べ腫瘍領域に高線量1回(1方向または直交2方向)の照射を行うもので、放射光による動物実験の結果は、正常組織の回復が良いにもかかわらず腫瘍が消滅し、個体の延命率が高いという特徴を示している。この特徴をヒトのがん治療に応用することが期待されるが、現在は放射光による300 keV以下のX線が動物実験に利用されている。この方法が高エネルギーX線で利用できれば、応用範囲が広がることが期待できるので、本研究では、高エネルギー化するときに問題となる線量分布のエネルギー依存性についてモンテカルロ法による計算機シミュレーションを用いて検討した。
コリメーターは、厚さ10cmのタングステンとし、スリット幅20μm、ビーム間隔(中心間距離)200μmとして、5本のスリットを設定した。X線は平行ビームとし、コリメーター透過後1mmの位置に20cmの水の層を設定、水の層を10cm透過した位置から厚さ1cmの水の層に吸収されるエネルギーの線量分布をPENELOPE-2008*によって6台のパソコンで並列計算させた。
線量分布で問題となるのはピーク線量と谷線量で、谷線量が許容範囲を維持しつつピーク線量に十分に高い線量を投与することがこの治療法の特徴となる。線量分布をビーム中央のピーク線量と中央から100μmの位置の谷線量との比(P/V)とし、X線のエネルギー依存性を求めたところ、100 keV, 200 keV, 500 keV, 1 MeVで、P/Vが150, 332, 2.37, 1.62となり、500 keV以上では極端に小さくなることがわかった。本結果を踏まえ、微小平板ビーム放射線療法の可能性について検討した結果を報告したい。
*F. Salvat, J.M. Fernández-Verea and J. Sempau, “PENELOPE-2008: A Code System for Monte Carlo Simulation of Electron and Photon Transport” (OECD Nuclear Energy Agency, ISSY-les-Moulineaux, France, 2008).
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© 2011 日本放射線影響学会
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