抄録
東京電力福島第一原子力発電所より北西約37kmに居住する住民15名(飯館村10名、川俣町5名)の外部および内部被ばく線量の推定を行った。5月5日と5月29日に各人に面接を行い、爆発後の住民の行動、食物摂取状況を聞き取った。同時に採尿を行った。外部被ばく線量は各家庭の庭先での空間線量を測定し、飯館村・川俣町役場での測定値減少傾向を参照し各家庭での日々の空間線量を推定した。避難者については避難場所の公式測定値を用いた。空間線量値を1とし、車内0.8,日本家屋0.4、コンクリート家屋0.1の遮蔽効果値を付与し、その場における時間を乗じて被ばく線量とした。放射能沈着のあった3月15日から5月5日までの47日間の積算線量を個人別に推定した。成人の平均積算線量は10.5mSv,小児のそれは平均6.4mSvであった。内部被ばく線量推定のため、5月5日に第1回目、5月29~6月4日に第2回目の尿を同一人らから得た。それぞれの尿は低バックグラウンドGe検出器により測定された。セシウム134と137による内部被ばくの預託実効線量は、成人は平均0.055mSv,小児は0.034mSvと推定された。ヨウ素131は成人4名、子供1名計5名に54日目尿において検出された。全身への預託実効線量は成人4名の平均で2.5mSv,子供1名では2.2mSvであった。外部被ばく対内部被ばく(セシウムのみ)比は87:1~566:1であった。