日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PB-2
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B: 放射線応答・シグナル伝達
32Pリン酸で内部被ばくしたマウスの血液細胞におけるDNA損傷応答遺伝子RNA量の増加
*田中 泉石原 弘薬丸 晴子田中 美香横地 和子福津 久美子山田 裕司
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抄録
 放射線感受性細胞が外部被ばくすることにより、p21mdm2などの増殖抑制関連遺伝子および、baxpumaなどのアポトーシス関連遺伝子の活性化することが知られている。我々はmRNAの高精度real-time RT-PCR定量技術を確立し、マウスに0.1~1 Gyのエックス線を1回全身照射すると、末梢血液や骨髄細胞におけるこれらのDNA損傷応答遺伝子のmRNA量が4時間後をピークとした一過性増加を示すことを明らかにした。また、そのピーク時におけるmRNA量が、被ばく線量に依存して増加することを示してきた。さらに、末梢血液で顕著に見られる概日リズム影響は、細胞増殖を反映するc-myc遺伝子のmRNAの定量値を利用することにより相殺されることも既に報告した。こうした外部被ばくとして1回照射で発生するDNA損傷応答遺伝子のmRNAの量的変動と、内部被ばく時における変動を比較した。
 内部被ばくモデルとしてまず32Pリン酸を使用した。0.5~5.0 MBqの無機リン酸を投与したマウスから、経時的に末梢血液または骨髄細胞を採取してDNA損傷応答遺伝子および細胞増殖関連遺伝子のmRNA量を定量した。これらのmRNA量の変動は、32P投与後4時間後に明瞭となり、8時間後をピークとしてその後減少した。何れの時間においても、特にアポトーシス関連遺伝子のmRNA量については、32P投与量に高度に依存していた。この実験モデルを利用した内部被ばく線量評価との相関の解析により、細胞内で発生する内部被ばく障害の分子過程の解析が可能であることが示された。
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© 2011 日本放射線影響学会
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