人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
株式掲示板におけるユーザ行動異常検知を用いた相場操縦発見手法に関する研究
宮崎 邦洋松尾 豊
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2015 年 2015 巻 FIN-015 号 p. 03-

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抄録

現在,日本市場において個人投資家の存在が大きくなっている.この流れは日本の経済にとって好ましいものであり,政府としては個人の資金をさらに市場に向わせたい旨をその提言の中で述べている.一方,インターネットの普及により,ソーシャルメディア上で風説の流布が行い易くなったため,個人投資家が安全に投資を行えなくなるような要因も増していると言える.実際掲示板上の風説の流布によって告発されたケースも複数ある.そのような行為をする者を相場操縦士や仕手師と呼ばれるが,この犯罪行為の標的にされやすいのもまた個人投資家である.何故なら個人投資家は機関投資家と比較して情報劣位にあり,非合理的な投資行動を取りやすいからである.しかし先述したように,東京市場の活性化という観点においては個人投資家の存在はとても大きいものである.現在の個人投資家売買比率増加の傾向を持続させるためにも,市場の公正性・信頼性を保つことはより重要になってくる.もちろん証券取引等監視委員会は,市場の監視を行っているが,大量の情報が生成されるソーシャルメディアにおいて,すべての書き込みを監視することは容易ではない.そのような問題に対して,Webマイニングの技術が有効である.Webマイニングではソーシャルメディア上に所謂ビッグデータを抽出・構造化・分析することで,現実世界のデータからでは得難い知見をより簡単に得ることができる.この技術を用いることで,かつて困難であったソーシャルメディアの監視を効率的に行えるようになる.以上の内容を踏まえ,本研究では,インターネット株式掲示板において相場操縦を発見することを目的とする.そのため,掲示板におけるユーザの行動を分析し,相場操縦行為を行った可能性のあるユーザを発見する手法を提案する.本研究が提案する手法は,急騰急落直前のユーザの行動が,通常時と比べどれくらい異常であるかを測定し,その異常具合をスコア化・ランク付けするものである.提案手法の使用用途については,金融庁など相場操縦を発見する主体を支援するシステムなどが想定される.

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© 2015 著作者
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