2016 年 2016 巻 FIN-016 号 p. 35-
投資信託の取引において,投資家が想定外のリスクを負うのを未然に防ぐため,2013年には投資信託法制が改正され,2014年12月より分散投資規制という規制が設けられることとなった.分散投資規制は,1つの発行体への投資が過度に集中しないよう,1つの発行体への投資額を投資信託純資産の一定割合以下にするものである.分散投資の是非についてはこれまでに多くの実証研究がなされているが,分散投資に制約が設けられることによって市場の価格形成にどのような影響が与えられるか議論されたことはない.そこで,本研究では,分散投資規制が資産価格急落時の市場に与える影響を,人工市場を用いて分析した.その結果,一方のリスク資産のファンダメンタル価格が急落した時,市場価格がオーバーシュートし,もう一方のリスク資産の市場価格も連動して下落することが確認できた.