2016 年 2016 巻 FIN-017 号 p. 01-
経済のマクロモデルは,ミクロプロセスの積み上げによって構築する,いわいる "ミクロ的基礎付け"(micro-foundation)がなされるべきとの主張が多くなされ,ミクロ的基礎付けがなされた経済のマクロモデルが多く生まれた.一方,リスク資産の価格変動というマクロ量をモデル化したものは多く存在するが,これらのモデルをミクロ的基礎付けしようという試みは多くない.そこで本研究では人工市場研究からの知見を用いて,ARCH モデルのミクロ的基礎付け,すなわち,各係数がどのミクロプロセスから生じているのかを明らかにすることを試みた.その結果,投資家の予想価格のばらつきと需給の歪みが大きくなるとボラティリティは大きくなり,流動性を奪う投資家の存在割合が大きくなったり投資家のリスク回避度が小さくなるとボラティリティクラスタリングは大きくなることが分かった.