抄録
人工弁移植手技は心臓外科領域において定着した感があるが, 人工心臓弁そのものについては形態上, 材質上いまなお改良が要求され, 各方面において一歩一歩理想的な人工心臓弁に向って開発が進められている. わが国において既に1, 500の人工弁置換が行なわれていると推定されるが, 日本人の手によって作られた弁はWada, Kay-Suzuki, SAM弁の三種であり, しかも国産化されたものはSAM弁だけというのはいささか寂しい気がする.
この論文は人工弁の開発について主として歴史的に顧みてその変遷を述べたが, 今後の人工弁開発の資となれば幸甚である.