抄録
人工弁置換術後の抗血栓療法は現在抗凝血薬に抗血小板薬が併用されることが多い。本研究では弁置換術後に抗凝血薬(ワーファリン)のみ投与群と抗血小板薬併用群にわけ術後の血液凝固能を測定し術直後の抗血栓療法の方法について検討した。プロトロンビン時間は術後第3病日ですでに85%と回復、血小板数血小板凝集能も第3病日以後回復、著しい充進を示し第21病日まで続いた。抗血小板薬特にTiclopidine投与により血小板凝集能の尤進が抑制された。これらの結果より血栓弁発生の危険は術直後より存在し、抗血栓療法は術直後より始める必要があると考えられた。我々はDipyridamole 2mg/Kg/日を術直後より24時間持続点滴で開始、第3病日以後ワーファリンとDipyridamole又はTiclopidineの併用を行なっている。なおDipyridamoleは末梢血管拡張作用によると思われる副作用が少なくなく慎重に投与する必要がある。