人工臓器
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人工血管置換術におけるヘパリン加フィブリン糊の効果
松田 光彦田畑 良宏森 渥視岡田 慶夫
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1984 年 13 巻 1 号 p. 396-399

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抄録
人工血管移植後の開存性を左右する因子は, 生体側のみならず, 使用する人工血管側にも多くみとめられる。移植直後よりみられる生体の反応, なかでも初期の血栓付着を抑えることは, その後の仮性内膜形成に好結果を与えるものと考えられる。そのために人工材料の改善が種々なされているが, 抗凝固剤を固定したり, 血管内皮細胞を人工血管内面にはりつけるなど, 複雑な手技, 技術が必要とされる。我々は, フィブリン糊がhigh porosityの人工血管においても完全にpreclottingの代用をはたし, ヘパリン使用下にも人工血管壁からの血液漏出のないことから, フィブリン糊にヘパリンを添加して人工血管を処理し, 移植後早期にみられる人工血管内面の状態を観察した。その結果, 全身性にヘパリン投与を行わなくても, ヘパリン添加フィブリン糊は, 人工血管内での血栓形成を抑え, 最長5ケ月にわたる観察で, ヘパリンを加えない場合に比べて, 内腔狭窄の程度を減少せしめえた。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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