抄録
Prostaglandin I2は体外循環において, ヘパリンに代わる抗凝固剤として使用可能であるが, 強い血管拡張作用を有するため, 血圧低下を招くことが明らかにされており, 臨床使用は末だ躊躇されている。最近, 化学的に安定で強力な血小板凝集抑制作用を有し, かつ降圧作用の弱いPGI2誘導体(APS-306)が開発された。我々はこの新しい誘導体を血漿分離体外循環回路(QB:50ml/min, QF:10~13ml/min)に使用を試みた。その結果, 50~350ng/kg・minでは, 動脈圧の低下もなく順調な2時間の血漿分離が可能であった。APS-306は強い血小板凝集抑制作用を有するにもかかわらず, 血圧低下作用は弱く, また半減期はヘパリンより短く約15分と推測される。本剤は, 肝不全, 劇症肝炎など出血傾向を伴う患者における血漿交換やdirect hemoperfusionなど体外循環を用いた治療の際の凝血阻止剤として適当であり, 消化管出血などを伴う患者の人工透析などにも適用が可能であると考えられた。