抄録
体外循環において補体が活性化され, 生体に悪影響を及ぼしていると考えられているがその機序は明らかでない。そこで今回我々は成人開心術症例につき, 補体プロフィール(CH50, C3, C4)の変動を, 無血体外循環群(以下無血群と略す, n=8)と充填血体外循環群(以下充填血群と略す, n=7)に分けて比較検討し, さらにin vitroにて人工材料が補体に及ぼす影響を検討した。充填血群では,バイパス時間とともに, C3, C4双方が同様に減少したのに対し, 無血群ではC4は減少が軽度で, C3のみが減少した。又, 実験的にも同様の結果が証明された。以上より, 体外循環そのものによる補体の活性化は主にalternative pathwayを介し, 同種血輸血によってさらにclassical pathwayも活性化され, より複雑な補体の活性化が起こると考えられ。補体の変動からみると, 無血体外循環の方が生体にとって有利である。又, 今後さらに生体適合性が良好で, 補体のalternative pathwayを活性化しない人工材料の開発が望まれる。