抄録
1976年9月より1986年5月までに当教室で施行したTVR17例, PVR2例を対象として、右心系置換弁(Hancock弁12個, Capentier-Edwards弁7個)の遠隔成績について検討した。TVRを施行した2例(10.5%)を早期死亡で失なった。生存症例に対し超音波検査を施行し、置換弁の評価を行なった。平均追跡期間はTVR施行症例で5.5年(最長10年)、PVR施行症例は3.0年(最長5.4年)で、2例の晩期死亡を認めたが、血栓弁や肺塞栓症は1例も認めなかった。超音波検査上、TVR施行症例中1例に軽度の逆流を、2例に軽度の狭窄を認めたが、臨床症状に乏しく、NYHA分類はI~II度であった。PVR施行症例には異常を認めなかった。TVR施行症例の生存率は、10年目で83.1±11.1%(Kaplan-Mayer法)と良好であった。遠隔期の弁機能評価には超音波検査が有用であり、右心系置換弁の退行変性は軽微で左心系に比べ、その進行は緩徐であった。