抄録
血栓の成長および赤血球の破壊に対する血流の速度勾配の水力学的影響を定量的に明らかにするために, in vitroにおける実験を行なった. 試料血液全体に一定速度勾配を加えるために, アクリル樹脂製の円錐・平板からなる試験機を製作し, イヌ血液に24℃において30~1,500s-1の速度勾配を持続的に加えた. 血栓の成長については, 円錐・平板間の血液の流動抵抗の上昇率から算出した血栓形成度(全血液に占める血栓の体積比)によって, また赤血球の破壊については, 血漿中遊離ヘモグロビンの濃度から算出した溶血率(全ヘモグロビンに占める赤血球外ヘモグロビンの数比)によっておのおの定量的に評価した. 実験の結果, 「速度勾配が400s-1以上1,000s-1未満」のときには血栓の成長が抑制され, かつ赤血球の破壊も少ない(一定速度勾配が加え続けられる時間が120分以内ならば)ことが示された.