1987 年 16 巻 4 号 p. 1663-1666
中心冷却灌流体外循環において生体が何℃から低体温を侵襲として認識し, 低体温に対しどの時点で最も高度な反応を示すか, どんな反応が最も強くあらわれるかについて, 多変量解析の一手法であるステップワイズ判別分析を用いて, 低体温と各種代謝の関係を検討した. その結果, 体温が最低温となった体外循環30分より遅れ, 体外循環1時間値が低体温の影響を最も強く受けていること, このとき28℃前後を境として異なる生体反応がみられること, 乳酸代謝と糖代謝に低体温の影響が最も強く示されることが明らかとなった. 体温が常温に復した術後は1病日に最も強い影響がみられ, 糖代謝と逸脱酵素の変化が著明であった。体外循環中の低体温臨界点28℃に対し, 術後の低体温臨界点は24℃にあり, 術中高度低体温例ほど術後の代謝障害は高度で, 遅くまで遺残すること, 術中低体温侵襲の判定は乳酸代謝と糖代謝が, 術後の判定には逸脱酵素が有用と考えられた.