抄録
過去10年間に教室では胸部並びに胸腹部大動脈瘤67症例に対して外科治療を実施し, 満足すべき結果をえた。これらの臨床経験からみて, 本症の手術成績を向上させるための重要なポイントは, 急性期例も多いことから手術時期の適切な決定と, 術中の補助手段の選択であった。とくに, 術前から腎機能障害を有する症例においては術中大動脈遮断時における下半身の循環維持は極めて重要である。かかる観点を重視し, 最近, 著者らは脳循環並びに下半身の循環あるいは尿量を十分にコントロールしうるBio-pumpを術中の補助手段として応用し満足すべき成績をえている。現在までに本症の6例にBio-pumpを応用したが, 本法の実施により全身の循環維持を安全かっ確実に行うことができ, これによる合併症は全く認めていない。本法は簡便な操作で, 上・下半身の血行動態を十分にコントロールしうるので胸部並びに胸腹部大動脈瘤の手術においては非常に有用である。