抄録
タンパク分解酵素阻害剤であるメシル酸ナファモスタット(FUT)を用い左心バイパス実験を行ない補助循環時の抗凝固薬としての有用性を検討した。体重9~11kgの雑種成犬7頭を用い左房脱血, 左頸動脈送血の左心バイパスを4時間行なった。補助流量は心拍出量の20%に当たる200ml/minとし, 脱血カニューラよりFUTを持続注入し, ACT, 血小板数, APTT, FDPを測定した。結果は回路内濃度1.5~2.0μg/mlで充分な抗凝固作用が得られた。全身血の血液凝固系の検討でも18mg/hr(1.8mg/kg/hr)で必要かつ充分なACT, APTTの延長を示した。出血などの副作用も見られずヘパリンに代わる有力な補助循環時の抗凝固薬と思われた。