抄録
人工心臓弁開発における数値流体解析の有用性について検討した。弁の流体力学的特性は、血栓形成および溶血にも関係し、弁形状の設計の重要な要素の1つである。従来、人工弁の開発は、設計、試作、特性評価、改良などが経験的に行なわれており、時間的、経済的に非効率的であった。そこで、我々は人工弁開発に差分法を用いたコンピュータ・シミュレーションによる数値流体解析を導入し、弁形状設計の効率化を試みている。
円管内の層流、円柱まわりの流れにおけるシミュレーション結果は、流れの可視化などの報告とよく一致することが確認された。既存弁のシミュレーション結果では、流れのプロファイルおよび淀みの位置が臨床報告等の結果で裏付けられることが示された。これより、本数値流体解析は、人工弁設計において血栓形成の予測などに効果を示すものと期待できる。