抄録
低容量、低有効膜面積のSarns社製外部灌流式ホローファイバー膜型肺(以下S肺)を臨床使用し、同じ外部灌流式膜型肺Maxima(以下M肺)と比較した。両肺とも気泡除去などの操作性は良好であったが、Sarns肺は、320mlという人工肺容量の小ささが体外循環回路充填量に反映され、希釈率も低く、その結果体外循環終了時まで全例無輸血体外循環が施行できた。血液ガス交換能に関しては、両者とも安定した経過を示した。血液成分保護に関して、血小板保存率はS肺にて体外循環開始時において良好であったが、体外循環終了時にはほぼ同等値をとった。溶血の点で、S肺は体外循環時間当りの遊離ヘモグロビン増加量がM肺に比し、やや高い傾向にあった。補体系の活性化により産性されるアナフィラトキシンのC3aはS肺にて低く抑えられた。以上より両肺とも臨床使用上充分有用な人工肺であるが、体外循環回路充填量節減と血中補体活性化の点で、S肺がやや有利であると思われた。