1990 年 19 巻 1 号 p. 101-104
解剖学的fittingの良い高性能の全人工心臓(TAH)を開発し、慢性動物実験により評価した。左右の心室の基本形状の異なる、右のポンプが左より扁平で長い長球形のTAHを制作し、さらに、血栓好発部位である人工弁把持部と、コネクタとTAHとの結合部を一つに統合し、かつ、結合部の密着度を高め、デザインの面から抗血栓性も向上させた。同時に、術中と術直後は臨床患者の管理の際の一般的なパラメータである中心静脈圧、左房圧、動脈圧を観血的にモニタするが、それ以後は、駆動圧ラインに組込んだ空気流量計と圧トランスデューサにより非侵襲連続的にTAHの機能を監視する方法を採用した。体重53kgの子牛に植込んだところ、術後急性期、慢性期とも管理が容易で血行動態は良好に維持され、111日間に渡り生存させることができた。解剖学的適合性、抗血栓性、術後管理を改善させたTAHは動物実験による評価で良好な結果を得、臨床患者での使用に向けて大きく前進したと考える。