1985年6月より後天性弁膜疾患にて人工弁置換術を施行した80例の術後早期の凝固系の変動を測定し、DIC状態及び血栓塞栓症発生との関連について、単弁置換群34例、三尖弁閉鎖不全(TR)非合併二弁置換群13例、TR合併単弁もしくは二弁置換群33例について比較検討した。TR合併群は術前よりTT、PTが低下しており(p<0.01)出血傾向を呈する例が多く、術後DIC例はTR群で7例(21%)と多かった。術後の抗凝血薬療法の開始はTR合併群、二弁置換群で遅れる傾向にあり、二弁置換群では第3～7病日はTTが高値を示していた(P<0.05)。術後の血栓塞栓症発生頻度は単弁群1.8%/pt-yr、二弁置換群4.8%/pt-yr、TR群1.2%/pt-yr。術後5年間の%free from embolismは、単弁群82.3%、二弁置換群77.9%、TR群87.5%と二弁置換群でやや不良であった。抗凝血薬療法下でも、Mesilate gabexate併用等によりDIC scoreは改善しており、人工弁置換術後は可及的早期の抗凝血薬療法が必要である。
