膜蒸留法は、海水の淡水化やアルコールの脱水の分野で注目を集めている新しい膜分離技術である。我々は、この膜蒸留法による血液からの除水について研究を進めてきた。牛血液系で膜蒸留実験を行った場合、膜面近傍に形成される温度および濃度分極層が透過抵抗となる。このため、装置の設計に半たっては、この分極層抵抗の解析が不可欠である。本報では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)平膜を装着した二連式撹拌バッチセル装置にてエチレンゲリコール水溶液-水系および牛血液-水系における膜蒸留実験を行った。濃度分極層の解析に限外濾過理論を適用することにより、膜面濃度の算出が可能となった。また、牛血液-水系では、200rpmの低撹拌回転数において温度分極層抵抗が総抵抗の61%を占め分極層律速となった。これに対して、1000rpmでは、膜抵抗が総抵抗の5鏡を占め膜律速となった。これより、実用化には分極層の破壊と膜の薄膜化が必要となることがわかった。