抄録
膵ラ島を高分子半透膜に封入することにより、レシピエントの免疫から隔離された状態で移植するbio-artificial pancreasには、免疫抑制剤を必要とせず異種移植も可能である等、数多くの利点がある。今回、メッシュ補強ポリビニルアルコールチューブ(MRPT)を用い、その中へS-Dラットの膵より分離したラ島を封入してハイブリッド人工膵を作製後、糖尿病ラット(wister系)への腹腔内移植を施行したところ、人工膵を作製しないでそのままラ島を移植した場合に比較し、有意の血糖値の低下を認め、かつ1例において97日間にわたる血糖値の低下が観察された。
In vitroにおけるMRPTの分子透過性に関する検討では、インスリンやグルコースは自由に透過させるが、拒絶反応の担い手であるグロブリンGは全く透過させないことが判明した。
MRPTを用いたbio-artificial pancreasは、今後の検討を積み重ねることにより、糖尿病に対する有効な治療法になり得る可能性が示唆される。