1991 年 20 巻 3 号 p. 811-816
今回我々は、完全肺逆循環というユニークなアイディアに基づくSingle Pump Artificial Heart(SPAH)を開発した。この概念は、心機能不全に陥った両心室を切除し、次に心房中隔を切除し、残存する両心房を吻合しCommon atrium(CA)を作成し、このCAが肺循環を維持する。この時血流は上下大静脈→CA→肺静脈→肺→肺動脈となり肺血流は完全逆循環となる。そして人工心臓を肺動脈と大動脈の間に接続し、肺動脈からの血液を大動脈に駆出する。体循環はこの人工心臓が維持する。このSPAHは従来の完全人工心臓(TAH)に比べて、人工心臓が1個ですむという利点がある。動物実験にてSPAHの手術手技の確立、急性期の血行動態及び完全肺逆循環が生理学的に可能かどうかを肺機能及び血行動態の面から検討した結果、完全肺逆循環を利用したSingle Pump Artificial Heart(SPAH)は技術的、生理学的に可能である事が示唆された。