抄録
新しく開発された膜型人工肺(MENOX AL 6000:クラレ社)は, 独自の中空糸と膜構造に工夫がなされ低膜面積(1.2m2)を特徴としている. 本研究では開心術に臨床使用し基本的性能を検討するとともに, 中空糸の血小板, 血液成分への影響に関して実験的検討を加えた. 単純冠血行再建術13例(MENOX人工肺使用: M群7例/CAPIOX SX人工肺使用群: C群6例)を対象とし血小板数変化率と溶血指数(遊離Hb濃度/循環時間)について2群間で比較検討した. MENOX人工肺のガス交換能は低膜面積にもかかわらず最大体重72kgの開心術において臨床的に全く問題を認めなかった. 血小板数変化率は体外循環開始後90分でM群, C群共に良好な値を示し, 溶血指数はM群: 9.15mg/dl/h, C群: 13mg/dl/hとM群が有意に低値を示した(p<0.05). さらに独自に考案した簡便な回路を用いて中空糸の人血液成分[血小板数, Thrombin-antithrombin III complex (TAT), Fibrinopeptide Bβ15-42 (FP Bβ15-42), C3a]に対する影響について検討したところ, ポリオレフィン(PO)中空糸はC3aの活性化が抑制されているなど全項目でポリプロピレン(PP)に比し有意に低く優れていた.