1997 年 26 巻 1 号 p. 232-237
ベンジルN, N-ジエチルジチオカルバメート(BDC)の光反応性を利用した表面光ブロック・グラフト共重合を行い、医療用デバイス表面を精密設計する手段として応用することを検討した。表面をBDC化したポリスチレンフィルムを基材として用い、モノマーを変えて紫外光照射を繰り返すことにより表面ブロック・グラフト共重合体表面が作成できることをX線光電子スペクトル分析(XPS)、原子間力顕微鏡(AFM)および透過型電子顕微鏡(TEM)観察より示した。デバイスの表面設計への応用として以下の3種類のAB型ブロック・グラフト共重合体表面を作成した:1)ヘパリン固定化表面として、カチオン性高分子(A、ヘパリン結合層)-非イオン性親水性高分子(B、血液適合性層)-ブロック・グラフト表面、2)蛋白質固定化表面として、非イオン性親水性高分子(A、緩衝層)-アニオン性高分子(B、蛋白質結合層)-ブロック・グラフト表面、および3)薬物担持・徐放表面として、親水性高分子(A、貯蔵層)-疎水性高分子(B、放出制御・貼付膜)ブロック・グラフト表面。本重合法は医用材料表面の生体適合化・機能化、及び複合機能化を実現させ、信頼性と高品質を与える表面精密設計の有力なる手段となりうると考えられる。