1998 年 27 巻 2 号 p. 541-544
本研究では、細胞の高次機能の制御を目指して、遺伝子発現、すなわち分化やアポトーシスを制御できるような人工材料を、神経成長因子(NG正)や腫瘍壊死因子(TNF)をパターン状に固定化して調製した。フォトリソグラフ法でNGF或いはTNFを高分子膜上にパターン状に固定化した。固定化がフォトマスクのパターンに従っておこっていることは、蛍光標識抗体による染色により確認した。NGF固定化膜上では、分化が誘導されると神経突起を形成する褐色細胞腫由来PC12細胞を、TNF固定化膜上では、接着依存性でアポトーシスが観察されやすい横紋筋肉腫細胞A673を培養した。PC12細胞は、NGF固定化領域でのみ分化が起こり神経突起を形成することが明らかになった。さらに、細い線幅にNGFを固定化した場合は、PC12細胞は、NGF固定化領域に従って神経突起を形成した。一方、A673細胞は、TNF固定化領域でのみアポトーシスが誘導され、DNAの断片化が起こることがわかった。