抄録
種々の環境でペースメーカーが電磁障害 (EMI) を受けることは良く知られている. しかし, 最新モデルに関しての検討は見当たらない. そこで著者らは, in vivoおよびin vitroペースメーカーを用いて磁界及び電界がペースメーカーにどのように影響するかについて検討を加えた. 9社11機種のペースメーカーを生体に近い生理的条件下で評価した. 磁界強度は, 医療用温熱器 (マイクロウエーブ) と携帯電話を除くと, 家庭環境, 作業環境, 医療環境で極めて低い値を示しペースメーカーに影響を与えることはなかった. 医療用温熱器では Medtronic KAPPA, Vitatron, DIAMONDIIを除く, すべてのペースメーカーがノイズサンプリングによりバックアップモードヘ移行した. 電界によりペースメーカーが機能異常を来すことはなかったが, 医療用温熱器使用時には50cmの距離まで極めて高い電界値を測定した. ペースメーカーに他社のプログラマーを作動させてもクロスプログラミングが生じることはなかった. 今回の検討により, 最新モデルのペースメーカーでは種々の電磁干渉にさらされてもオーバーセンシングや出力停止といった高度なペースメーカー機能の異常が認められないことが判明した. しかし, 電磁環境がますます増加し複雑化する現状ではEMIに対する注意は怠ることができないと考えている.