日本細菌学雑誌
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平成30年黒屋奨学賞受賞論文
人工バクテリオファージの創出
安藤 弘樹
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2018 年 73 巻 4 号 p. 201-210

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抄録

細菌は私達の健康と疾病に深く関わっている。薬剤耐性菌の出現や, 細菌叢が私達の健康に与える影響についても広く一般的に知られるようになってきた。いわゆる善玉菌・悪玉菌と呼ばれる細菌(群)を制御することは, 健康の増進や疾病の予防・治療に直接繋がると考えられる。しかし, 多種多様な細菌を自由に正確に制御できる方法は存在しない。例えば, 抗菌薬は一般的に広域スペクトルを持っており, 特定の細菌だけを殺すことはできない。このような状況で近年, 細菌の天敵ウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を使って, 薬剤耐性細菌感染症を治療する, 細菌叢を制御するという試みがなされている。ファージは高い宿主特異性を持ち, 特定の細菌だけを標的にすることができる。しかし, 自然環境等からファージを単離し, 特徴付けを行うことには多大な労力と時間がかかる。また, 有用な遺伝学的ツールがなく, 改変することも困難である。

本稿では, ファージを「採ってくる」のではなく, 合成生物学的手法によって「創る」アプローチを紹介し, これが上述の課題に対してどのように応用できるかを考察する。

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