日本細菌学雑誌
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2022年浅川賞受賞論文
ゲノム解析を基盤とした細菌の遺伝的多様性に関する研究
林 哲也
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2022 年 77 巻 4 号 p. 145-160

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抄録

地球上には膨大な数の多様な細菌が存在し,各菌種は様々なレベルの菌種内多様性を示す。このような多様性が出現する背景には,細菌のもつ外来性遺伝子獲得能力の高さと多様な可動性遺伝因子の存在がある。私は最初に緑膿菌サイトトキシンの生化学・遺伝学的解析と本毒素遺伝子をコードするファージのゲノム解析に取り組むなかで,細菌の遺伝的多様性とファージなどの可動性遺伝因子に対する興味が大きく膨らむとともに,ゲノム解析の威力を実感し,これを契機に腸管出血性大腸菌をはじめとする様々な病原細菌,さらには人や動物の常在菌(叢),環境中の微生物集団などをゲノム解析の勃興から次世代シーケンサなどの開発による革命的なゲノム研究の進展という刺激的な流れの中で研究を進めてきた。本稿では,私が行なってきた様々な細菌のゲノム解析の中から,まず緑膿菌ファージに関連した解析と腸管出血性大腸菌関連の解析を紹介し,次に大腸菌などとは極めて対照的なリケッチア科のゲノムの解析,また非常に限られたゲノム変化を捉える必要のある院内感染のゲノム疫学や同一宿主内でのゲノム多様化の解析についても簡単に紹介する。

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