日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
2024年黒屋奨学賞受賞論文
全ゲノム配列解析を利用した腸管出血性大腸菌の集団遺伝学的研究
李 謙一
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 79 巻 4 号 p. 283-289

詳細
抄録

腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC)は,国内では年間3,000名以上の感染者が報告される公衆衛生上重要な病原菌である。そのため,分子疫学的手法を用いた全国的なサーベイランスが行われている。近年次世代シークエンサーの実用化に伴い,全ゲノム配列(whole-genome sequence, WGS)解析を用いた多数の株の解析が可能となり,サーベイラスへの応用も現実的となっている。本稿では筆者らのグループがEHECのWGS解析を利用して行った次の研究成果を紹介する:1)WGS解析パイプラインの構築と国内サーベイランスの高精度化,2)プラスミドやファージといった可動性因子の動態究明,3)新規高病原性EHECの系統および病原性解析。これらの結果から,EHECの遺伝的多様性が明らかになるとともに,病原性に関する共通因子が明らかになりつつある。

著者関連情報
© 2024 日本細菌学会
feedback
Top