日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
31P核磁気共鳴の応用による細菌芽胞の内部pH推定の試み
柴田 洋文朝倉 正登谷 勇
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 39 巻 4 号 p. 749-755

詳細
抄録

Bacillus cereus芽胞の31P核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を試み,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の微量添加により,明瞭なピークを持つ鮮明で再現性のあるスペクトルを得ることができた。しかし,測定には60,000回以上の積算(約14時間)を必要とし,この点で今後に問題を残した。
pH 6.4および8.4の芽胞懸濁液について得られたスペクトルには,それぞれ,2本と3本の明瞭なピークが認められた。pH 6.4のスペクトルに現われた2本のピークはいずれもpH 8.4のスペクトルにも現われた。
両スペクトルに現われたピークの帰属を検討した結果,0ppmおよび1.67ppmに現われたピークはそれぞれリン脂質,無機のリン酸に由来するものと考えられた。しかし,pH 8.4のスペクトルにのみ現われた3.48ppmのピークについてはその帰属を決定することができなかつた。
本研究において,ATPやNAD+に由来するピークは確認できなかつた。また,芽胞においては無機リン酸と同程度かあるいはそれ以上含まれているとされる3-ホスフォグリセリン酸に由来するピークもまた同定できなかつた。
無機リン酸のケミカルシフト値のpH依存性に基き芽胞の内部pHを推定した結果,そのpHは6.5であつた。

著者関連情報
© 日本細菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top